μ-MIM技術ニュース Vol.44

精密金属射出成形(μ-MIM) 技術ニュースレター
Micro Metal Injection Molding Technical Newsletter

「金属射出成形 技術ニュースレター」は、金属射出成形に関する開発・設計者向けの技術情報をお伝えする技術ニュースレターです。印刷の上、ぜひ貴社内でご回覧ください!

密度からみた圧粉成形、MIM、HIPの特徴と比較

溶製材を用いる機械加工品やプレス加工に比べ、粉末冶金法で製造された金属部品は密度が低い点を問題視される機会が多いです。用途によっては密度が低いことが利点となる場合がありますが、一般的な運用においては、設計時の想定機械強度を満たすため、密度が高いことを要求されます。今回は密度の観点から粉末冶金法の特徴を紹介します。

金属粉末成形法の比較

現在も金属粉末冶金の中で最大の生産量を誇る圧粉成形法とMIMの焼結体密度は、いずれの方法でも理論密度に対し数%程度の空隙が残留します。ステンレス粉末を使用した場合、一般的な圧粉成形の場合は92%程度、MIMでは98%以上の密度の焼結体を得ます。

98%以上の密度が得られる場合、空隙が引張試験強度に大きく影響を及ぼすことはありませんが、数%程度の空隙も許されない場合、熱間等方圧加圧法(Hot Isostatic Pressing, HIP)が後処理として採用されます。

圧粉成形、MIM、HIPの特長

圧粉成形は粉末冶金法の中で最も生産性が高い方法です。粉末に混錬する潤滑材を体積比で数%程度入れただけで成形できるので、潤滑材を除去する脱脂工程が短時間で済みます。粉末を圧縮変形し成形するため、金属粉末表面の酸化膜が破壊され金属面が接合した成形体をえられ、焼結も比較的短時間に進行します。成形できる形状は制限が多いですが、寸法精度は高い水準で制御が可能で、圧粉成形は圧縮方向は±0.004mm/mm、圧縮直行方向は±0.002mm/mmの精度で焼結体を得ることができます。しかし、一般的に金型のクリアランスと生産性の観点から、MIMに比べ大きい粒径の金属粉末を使用すること、さらに粉末の圧縮率が成形体内で分布があるため高温焼結が不可能であることから、ステンレス部品の焼結体の密度はMIMよりも低くなります。

MIMは寸法精度、生産性も中庸な方法ですが、特長として部品の形状自由度が高いことと圧粉成形にくらべ密度が高いことがあげられます。バインダと呼ばれる樹脂を体積比で40%程度混錬するため、複雑な形状や比較的小さな部品の量産が得意です。圧粉成形による成形体と異なり、成形中の金属粉末変形がなく、部品中の金属粉末分布が一様であるため、比較的高温で焼結しても変形を抑制でき、より高密度な焼結体を得ることができます。また、細かい金属粉末を用いて製造するため、近年需要が拡大している金属3Dプリンタ用粉末のスペックアウトした残留粉末の活用も含め、微細粉末を用いた転写性の高いフィードストックの開発が進められています。

一般的には圧粉成形やMIMで製造した焼結体、あるいは鋳造品の密度を高める目的で運用される場合が多いHIPですが、厳しい環境下で運用される巨大金属部品、例えば海底油田掘削パイプの連結部品などを少量製造する目的でHIPによる粉末成形が採用される場合があります。HIPで粉末から焼結を得る場合、密度が高い製品を得られますが、使い切りの密閉容器内に高純度な粉末を充填し、焼結するため量産性が低く、また、微小な部品の製造には適しません。

太盛工業μ-MIM技術の特徴

μ-MIMは中庸であるMIM技術を、微小で複雑な形状の製造に特化したMIM技術を開発しました。98.5%以上の密度、SUS部品であれば5mmまでの全長に対し±0.010mmの寸法精度を達成します。追加の機械加工などを最小限に抑えるべく、ネットシェイプ製造にこだわった金型設計と安定品質のμ-MIM部品をルーペで細かくご覧いただければと存じます。

参考文献;
Epma-introduction-to-pm-ps.pdf, Epma-introduction-to-pm-mim.pdf, Epma-introduction-to-pm-hip-technology-english.pdf
An overview of dynamic compaction in powder metallurgy 10.1179/174328008X309690

コラム

ドイツ支社勤務のパイネマンです。
ドイツ法人立ち上げ時から参加し、1年が経過しました。現在は法人営業・営業企画を担当しています。挑戦を後押ししてくれる社風なので、自分から様々なアイデアを発信して、新しい物事に日々取り組むよう心がけています。
ドイツではボードゲームが世代を問わず非常に盛んで、その影響で私もボードゲーマーになりました。旅行先でもボードゲームを集め、翻訳シールなどを貼って楽しんでいます。ドイツにお立ち寄りの際はぜひ一緒にプレイしましょう!

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