Technique
技術ニュースレター
μ-MIM技術ニュース Vol.45
精密金属射出成形(μ-MIM) 技術ニュースレター
Micro Metal Injection Molding Technical Newsletter
「金属射出成形 技術ニュースレター」は、金属射出成形に関する開発・設計者向けの技術情報をお伝えする技術ニュースレターです。印刷の上、ぜひ貴社内でご回覧ください!
今さら語る粉末のお話-その1
久々の「今さらシリーズ」です。MIMに限らず様々な業界でものづくりの出発点となる粉末について、評価の基本と実情・悩みを複数回に分けてお伝えしたいと思います。
はじめに
英語ならpowder一つで済むところ、粉、粉体、粉末、・・と日本語は難しいですが、MIMの呼称はJISで金属粉末射出成形となっていますので、ここでは粉末とします。
さて、最初に極々粗っぽい計算を試みました。当社に多い平均粒径約8μmの粉末は1㎤あたり約37億粒あります。1バッチ5kgで作業を進めますので、ステンレスの密度を7.8とするとその中には約2兆4000億粒の粉末が存在していることになります。しかも一粒として同じものはありません。
世界の人口は高々(?)80億ですが、その300倍にも相当する個々の粒の集団(Mass)を意のままに操ってMIMのものづくりは成り立っているわけです。凄いです。人類同様、時々悪さをする連中に悩まされながらも・・・。
粉末評価の実際
MIMのものづくりの要は下の写真に示すように、まず金属粉末と樹脂粉末を加温して混錬し、粘土状の塊からペレット状に加工し、これを射出成形して所望形状の成形体を作製することです。樹脂粉末ももちろん大事ですが、粒としての評価が困難なことと最終的に樹脂は製品に残らないので、MIMでは主に金属粉末の評価が中心です。
粉末を評価するとき、粉末の形状、大きさ、粒度分布等粉末自体のいわば静的評価と、実際の工程で粉末を何らかの分散媒と混合して使用する場合の動的評価が重要になってきます。MIMの場合は樹脂粉末が分散媒となって成形時の流動性(成形性)に静的パラメータが大きく影響しています。
金属粉末を購入した際のミルシートにある情報は、多くの場合化学組成、粒度分布(平均粒径(D50値))、タップ密度です。タップ密度は、粉末をMassとして評価するとき安息角と並んでもっとも簡便な評価項目です。同義のかさ密度も含めてこれらの原始的なパラメータは、粉末の充填性、混錬性、流動性等を予測する指標になります。

一方、粒度分布は粉末を扱う上で最も重要な情報です。その測定方法は過去から様々な方法がありますが、昨今ではレーザーによる光学的計測法が主流であると言って過言ではありません。装置自体は高価かつ複雑ですが実際の測定作業は耳かき1杯程度(約0.1g)の試料をセルの中に投入するだけなので簡便さの点では一番かも知れません。しかも上図のような‘奇麗すぎる’分布と平均粒径を瞬時に出してくれますので重宝この上ありません。
しかしながら筆者のような天邪鬼は、1ロット25㎏で購入する粉末をわずか0.1g(その比率は4ppm!)で代表させることに一抹の不安を覚えながらも、かと言って右のSEM写真で全数現物確認するわけにもいかず、ひたすら統計分布を信じてものづくりを進めています。(・・・続く)

おわりに
粉末に関する科学的なお話は世の中に数多出ている専門書に譲るとして、ここでは現場視点の読み物として粉末評価に関する四方山話にしばらくお付き合いいただければ幸いです。
コラム
こんにちは、技術部の松末です。昨年の4月に入社したばかりで、もうすぐ1年が経ちます。早いような遅いような…現在は見積計算、試作品の生産計画を担当しています。計画通りに生産が進んだり、見積計算に携わった案件の受注が来た時にやりがいを感じます。日々楽しく丁寧にを心がけてお仕事をさせていただいています。
趣味は、美味しいものを食べることで、特に甘いものが大好きです。昨年の夏はジェラートにはまりたくさん食べました!!ピスタチオとフランボワーズのフレーバーがお気に入りです。最近では、お正月に食べたスイーツのおせちがとても美味しかったです。


