04.12.19

論文

LIGAプロセスを用いた金属粉末射出成形によるマイクロ構造体の製造法

粉体および粉末冶金 論文集52−1


概要

金属粉末射出成形(Metal Injection Molding, MIM)は,射出成形と粉末冶金を組み合わせた製造技術である.その特長として三次元複雑形状の精密部品の量産が可能であり,また微細構造を有する精密型の転写性に優れていることが挙げられる.様々な分野で金属部品の高精度かつ小型化の要求が一層高まる中で,著者らはMIMのマイクロ化と高品質化を実現させるため,マイクロ金属粉末射出成形(μ-MIM)の原料,各製造プロセスおよび評価方法に対して研究を行ってきた.それらは1)金属粉の製法および粒径の影響1),2)混練性の評価方法の提案2)と偏差低減化3),3)マイクロ射出成形に適した成形機4),4)焼結条件が粒成長に及ぼす影響1),5)力学的特性評価手法5),6)金型転写性6),7)流動挙動の解析7)などである.しかし,さらなるMIMのマイクロ化のためには従来よりもさらに微細な構造を有する精密金型を使用するとともに,狭小部分の充填性や脱脂時の損傷低減など各工程で高度な技術を必要とする.
一方,小型集積化高機能デバイスの作製のため,微小電気機械システム(MEMS)をはじめとする半導体製造工程を利用した超精密加工技術が発展してきている.その一つとしてLIGAプロセス(Lithographie, Galvanoformung, Abformung:独語)が挙げられる.LIGAプロセスはシンクロトロン放射で得られるX線を光源とするリソグラフィー(Lithographie)によりレジスト材を加工し,電鋳(Galvanoformung)により金属製マイクロ構造体を製作し,それを金型として精密なプラスチック成形(Abformung)を行うことで,機械加工では不可能な高アスペクト比の微細構造部品が高精度で製造可能な技術である8).しかし,現状は装置が大型かつ高コストで,製造の安定性に乏しく,材質の自由度が低いなどの課題もある.
そこで,本研究はさらなるMIMのマイクロ化の試みとして,LIGAプロセスを用いて微細構造を有する微細金型を作製し,その成形工程にμ-MIM技術を適用することにより,MIMの超微細構造化の可能性,言い換えればLIGAによる金属部品の量産性および使用材料の多様化の可能性を検討した.その際,微細構造であるがゆえに起こる問題点の改善方法を提案し,その製造工程および作製したマイクロ構造体の評価から,LIGAプロセスを用いたMIMによるマイクロ構造体の製造の可能性を検討した.