04.06.19

論文

射出成形技術を用いたマイクロリアクターの製造

高分子学会2004


概要

金属粉末射出成形(Metal Injection Molding, MIM)は,プラスチック射出成形法と粉末冶金法を組み合わせた製造技術である.金属微粉末と多種の樹脂から成るバインダを混練した原料を射出成形し,脱脂および焼結工程によりバインダを分解し,粉末を焼結させ製品を得るものである.MIMは材質の多くが低粘度の樹脂であるため流動性に優れ,微細構造を有する型への転写性に優れることに加え,それらの部品を大量生産できることも利点として挙げられる.特に弊社ではMIMのマイクロ化に力を入れ,精密微細金型を用いて,マイクロメートルオーダーの非常に小型で微細な形状を有するMIM製品をμ-MIMと呼び,研究開発を行っている.今回,更なるμ-MIMの発展形の開発デバイスとして,マイクロリアクターに着目した.

現在,有機合成による化学物質の反応合成は,巨大施設で大量の廃液を伴って行われており,環境負荷と効率の悪さが問題となっている.その対応策としてマイクロスケールの流路を有するリアクターでの合成がある.マイクロ流路では,反応効率の飛躍的な向上,廃液の減量,温度制御の容易さ,省スペース化など数々の利点が挙げられる.しかし,マイクロリアクターは一個当たりの合成量が少量になることから,大量並列使用する必要がある.弊社μ-MIM技術の適用により,マイクロリアクターの製品化,安定供給の実現を目標とし,さらにMIMの素材選択の柔軟性を生かして材質を変化させ,高効率リアクターの作製を検討している.