06.11.17

論文

パウダースペースホルダー法によるマイクロポーラス金属の製造と特性評価

パウダースペースホルダー法によるマイクロポーラス金属の製造と特性評価



日本機械学会年次大会2006 口頭発表

概要:
ポーラス金属は,その多孔質構造の特質から軽量かつ比表面積が大きく,金属特有の熱および電気伝導性と高い力学的特性を有する.特に,マイクロオーダーの気孔を有するポーラス金属は,フィルター,電極,インプラント,ヒートシンクおよび熱交換器など様々な機能性部品としての要望が高い.その製造方法は多く存在するが,これらの多くは気孔径が大きく,製造可能な材質も限定されることに加え,二次加工が必要な素材提供に留まり,ネットシェイプによる量産や,気孔径や気孔率を制御することは非常に困難である.
そこで,著者らはプラスチック射出成形と粉末冶金を組み合わせた金属粉末射出成形(Metal Injection Molding, MIM)に,パウダースペースホルダー(Powder Space Holder, PSH)法を適用し,ミクロン級のポーラス構造を有する金属製多孔質部品を高い寸法精度で,複雑三次元形状をネットシェイプ製造できる技術の開発に成功した[1].このPSH-MIM法は,金属粉末とバインダを混練して得られるMIM原料に,第三の構成材料として気孔形成用樹脂粒子を添加し,成形,脱脂および焼結を経て,ポーラス金属焼結体を得る.添加する気孔形成樹脂粒子のサイズや配合割合を種々変化させることにより,気孔径,気孔率および気孔構造を制御することが可能である.また,形成される気孔形状が球状であり,従来の粉末焼結による多孔質焼結体に比べて気孔率は高く,気孔径も幅広く変化可能である.
本報では,本PSH-MIM法の製造法と,これにより製造されたポーラス金属の特徴を紹介し,本法の有効性と可能性について論じる.