09.11.17

論文

ナノ粉末を用いたナノインプリント犠牲樹脂型インサート粉末射出成形によるマイクロ構造体の作製

ナノ粉末を用いたナノインプリント犠牲樹脂型インサート粉末射出成形によるマイクロ構造体の作製

日本機械学会マイクロ・ナノ工学専門会議 第1回マイクロ・ナノ工学シンポジウム講演論文集

概要:

著者らは,これまで汎用の金属粉末射出成形(Metal powder Injection Molding, MIM)に用いられる粒径10μm程度の水アトマイズ粉末を微細な形状の金型へ射出成形し,脱脂および焼結を経て小型の金属部品を得るマイクロ金属粉末射出成形(μ-MIM)の量産化を実現してきた(1).さらなるMIMのマイクロ化にはより精密な型が必要であるが,超精密加工法の多くは樹脂に対して適用可能なことが多く,また樹脂型は熱伝導率も低くMIM材料の流動性に優れるため,μ-MIMには樹脂型の使用が有効である.一方,離型困難な複雑な形状部品を製造する際にも,射出成形やラピッドプロットタイピング(RP)により作製した樹脂型を用いた犠牲樹脂型インサート金属粉末射出成形(SPiMIM)が有効である.

さらに,著者らはμ-MIM部品の高アスペクト化・高集積化を実現するため,2つのマイクロ犠牲樹脂型インサート金属粉末射出成形(μ-SPiMIM)法を開発した(1)1つはレジスト薄膜を犠牲樹脂型として用いる一段転写法のResist/μ-SPiMIMプロセスであり,他方はLIGAプロセスにより得られた成形体を犠牲樹脂型に用いる二段転写法のLIGA/μ-SPiMIMプロセスである.この2つのプロセスには,それぞれ製造法特有の利点と欠点が存在する.犠牲樹脂型の製造において,Resist/μ-SPiMIM法は低コスト化,LIGA/μ-SPiMIM法は高精度化が課題である.一方,さらなる加工精度の向上や高集積化を目的に,汎用MIM用のマイクロ粉よりもさらに細かいナノ粉末を用いて研究を行なった結果,ナノ粉末の凝集を考慮したバインダの調製が必要で,焼結密度や強度の低下など解決すべき課題があることが分かった.また,ナノ粉末のサイズ効果が現れるような,より微細な構造体の作製に対してナノ粉末を用いることが適していることも分かった.

本研究では,ナノインプリントリソグラフィ(NIL)法により作製された微細構造を有する樹脂成形物を樹脂型に用い,ナノサイズの金属粉末で調合されたMIM材料を射出成形し,脱脂および焼結を経て数μm~数十μmのマイクロ構造体を製造するNIL/μ-SPiMIMプロセスを提案する.これまで開発した他のμ-SPiMIMプロセスとNIL/μ-SPiMIMプロセスにより製造が期待される構造体の形状サイズを図1に示す.構造体の微細化に伴い,寸法精度や表面粗さの向上が要求されるため,さらに細かい金属粉末を使用する必要がある.本研究では,ナノサイズの純銅粉末をNIL/μ-SPiMIMプロセスに適用し,射出成形および脱脂・焼結条件の最適化により,マイクロ構造体の製造の可能性を調査した.