10.09.17

論文

ナノ銅粉末を用いたNIL犠牲樹脂型インサートMIMによるマイクロ構造体の脱脂・焼結過程

ナノ銅粉末を用いたNIL犠牲樹脂型インサートMIMによるマイクロ構造体の脱脂・焼結過程



機械学会年次大会2010 S0402

概要:
著者らは,これまで汎用の金属粉末射出成形(
Metal powder Injection Molding, MIM)に用いられる粒径10μm程度の水アトマイズ粉末を微細な形状の金型へ射出成形し,脱脂・焼結を経て小型の金属部品を得るマイクロ金属粉末射出成形(μ-MIM)の量産化を実現してきた.さらなるMIMのマイクロ化にはより精密な型が必要であるが,超精密加工法の多くは樹脂に対して適用可能なことが多く,また樹脂型は熱伝導率も低くMIM材料の流動性に優れるため,μ-MIMには樹脂型の使用が有効である.また,離型困難な複雑な形状部品を製造する際にも,プラスチック射出成形やラピッドプロットタイピング(RP)により作製した樹脂型を用いた犠牲樹脂型インサート金属粉末射出成形SPiMIM)が有効である.

そこで著者らはμ-MIM部品の高アスペクト化・高集積化を実現するため,2つのマイクロ犠牲樹脂型インサート金属粉末射出成形(μ-SPiMIM)法を開発した(1,2)1つはレジスト薄膜を犠牲樹脂型として用いる一段転写法のResist/μ-SPiMIMプロセスであり,他方はLIGAプロセスにより得られた成形体を犠牲樹脂型に用いる二段転写法のLIGA/μ-SPiMIMプロセスである.一方,さらなる加工精度の向上や高集積化を目的に,汎用MIM用のマイクロ粉末よりもさらに細かいナノサイズの粉末を用いて研究を行なった結果,ナノ粉末の凝集を考慮したバインダの調製が必要であることに加え,汎用のマイクロ粉末に比べて多量のバインダを含有するため,脱脂・焼結条件の最適化および焼結密度や強度の低下など解決すべき課題があることが分かった.また,ナノ粉末のサイズ効果が現れるような,より微細な構造体の作製に対してナノ粉末を用いることが適していることも分かった.

本研究では,ナノインプリントリソグラフィ(NIL)法により作製された微細構造を有する樹脂成形物を樹脂型に用い,ナノサイズの金属粉末で調合されたMIM材料を射出成形し,脱脂および焼結工程を経て数μm~数十μmのラインアンドスペース(L/S)パターン構造を有するマイクロ構造体を製造するNIL/μ-SPiMIMプロセスを提案する.また,マイクロ構造体のさらなる品質向上および脱脂・焼結方法の最適化を目指し,ナノサイズの銅粉末の脱脂・焼結挙動を調査した.