μ-MIM技術ニュース Vol.45

精密金属射出成形(μ-MIM) 技術ニュースレター
Micro Metal Injection Molding Technical Newsletter

「金属射出成形 技術ニュースレター」は、金属射出成形に関する開発・設計者向けの技術情報をお伝えする技術ニュースレターです。印刷の上、ぜひ貴社内でご回覧ください!

1.世界最高峰の焼結技術

MIM は原料の混練・射出成形・脱脂・焼結を経て製造され、各工程での品質管理が非常に重要です。特に、製品サイズが小型化するほど、寸法精度はもちろん、規格に沿った炭素・酸素など成分系の制御など目に見えない部分まで安定して製造することは極めて困難となってきます。
太盛工業ではこれまでMIM の高品質化の追求こそが、お客様に安心してご利用頂けるμ-MIM のコア技術であると確信し、各製造工程における課題に対して個々に改善を実施してまいりました。今回のニュースレターではその中から焼結技術と評価技術に焦点を当ててご紹介致します。

① 脱脂・焼結工程の一体化

一般的な MIM では射出成形によって作られた成形体をそのまま加熱し、樹脂成分を除去することは変形や損傷の原因となるため、まず溶媒抽出によって大部分のバインダ樹脂成分の除去が行われています。しかしながら、有機溶媒は人体や環境に好ましくないことに加え、脱脂工程も長時間必要となってしまいます。
そこで弊社ではこれまでにもご紹介してまいりました、加熱脱脂でも成形体の品質に影響を与えずに完全に除去可能な独自開発のバインダ樹脂系を使用することで、脱脂および焼結を同一の炉で一連の工程として作業効率が非常に高い連続的な製造を実現しております。

② 高度な焼結条件管理

MIM では焼結工程で脱脂後の粉末粒子どうしを結合させ緻密化する事で最終製品を得ています。この工程では完全に緻密化させることはもちろん、焼結収縮による寸法偏差や残炭・酸化など最終製品の品質に悪影響を及ぼさないよう配慮する必要があります。特に原料金属粉末の細かいμ-MIM の領域では粒子の比表面積が大きくなることで反応性が高くなり、焼結条件の影響を受けやすくなるため、より高度な管理が重要となります。特に影響の大きい要素が炉内全体の均熱制御と炉内雰囲気制御です。一回の焼結に何千個・何万個もの製品を焼結するμ-MIM 部品では炉内での温度ムラやバッチ間の再現性もシビアな影響を受け、Lot 内・間での Cp 値に直接関わってまいりますので特に製品ごとの条件の最適化が重大な部分となっています。これらの課題に対応すべく、弊社で導入しているのが島津メクテム㈱様と開発した PHS 炉です。こちらの機種には炉内にタイトボックスが設けてあるので、脱脂時のバインダベーパ(分解成分)は炉壁や断熱層に付着・汚染することなく、炉外に排出可能で、多くの種類のガスを加圧雰囲気でも昇温が行えるので脱脂・焼結の進行状況や金属種に合わせて最適な温度・雰囲気選定が行え、脱ガス・脱脂・焼結の連続処理が可能となっています。さらに、加圧ガスと冷却ファンを利用した高速(制御)冷却が可能なので、熱処理工程でネックとなりやすい冷却時間の効率化も図れます。

2.焼結部品の品質評価

最終寸法精度の評価体系についてはこれまで数多く紹介してまいりましたので、今回は前述のとおり、目に見えない品質の部分、とりわけ金属の成分分析・組織評価についての弊社の取り組みをご紹介致します。MIM ではその工法上、バインダ成分(炭素・酸素)を多く含む状態で加熱加工するので、物性や耐食・磁性などの諸特性などに対しても影響の大きい炭素含有量に対しては特に慎重な管理が必要です。
そこで弊社では堀場製作所の固体中炭素分析装置(EMIA)を導入しております。こちらの設備を利用することで、1g程度の試料に含まれる炭素量も 0.000001%の精度で確実に特定することが可能です。他にもSEM(電子顕微鏡)にイオンミリング装置やEDX(元素分析)を組み合わせることで容易に焼結部品の断面組織の評価も可能です。
国内最先端の設備や特殊な試作設備が超精密 MIM の生産を支えています。太盛工業では日々の新しいニーズに柔軟に対応すべく、多くの分析機器や試作・評価体系を整えてまいりました。成分分析や金属組織観察に限らず、個別に開発スポットごとに対応が可能ですので、是非ご相談下さい。
Web では掲載していないニッチなターゲットに向けた設備もございますので、まずはどのようなものかもっと詳しく知りたい、実物を見てみたい。という方に向けての出張セミナーラボツアーも随時行っておりますので、是非お問い合わせ下さい。

<今後の展示会予定>
2018 年 4 月 ファインケミカルジャパン
2018 年 6 月 医療機器開発製造展 MEDIX

太盛工業社員が語る今月のコラム

町田駅側にございます東京営業所に勤務しております岡村典子です。年末の話になりますが、ホテルにて会社の忘年会が行われました。
いつも制服姿しかほぼ見る事のない皆さんですがこの日ばかりはお洒落に身を包み入社してからの思い出話の披露で泣き笑いの楽しい 2 時間でした。今年も日本全国駆け回りたいと思いますのでお声掛けどうぞよろしくお願い致します。